ドック在籍時代のVader

ポーランド出身のデス・メタル・バンドであるヴェイダーは、共産主義時代から活動していたバンドで、どこまでが本当なのかは分からないが命懸けでメタルをやっていたとのこと。

音楽的には神秘主義や神話をモチーフにした哲学的かつ文学的なデス・メタルをやっており、ブラック・メタル的な反キリスト教の要素もある(中期からは音的にもブラックの要素を取り入れた)。

特筆すべきは、その音楽的レベルの高さ。

デス・メタルというのは基本的に音楽の体を成しておらず、ただひたすらにやかましいだけなことが多いのだけれど、ヴェイダーの音楽はやかましくはあるがちゃんと音楽になっているし、彼らの高度な演奏には格好良さも兼ね備えている。

アンチ・クライストの要素が強いのは、民主化以降のポーランドで大多数を占めるカトリック教徒達による執拗な嫌がらせに対する怨みもあるんだろう。

けれど、歴史を紐解くとキリスト教徒達による悪行は数え切れないほどある。

布教を隠れ蓑に植民地支配や虐殺、性奴隷、そして人身売買にまで手を染めたのだから、反キリスト教に走るのはある程度分かる。

「悪いのはイエス・キリストではなく、伝える過程で教徒達が教えをねじ曲げた結果悪くなったのかな?」と考えたこともあったけれど、実際のところイエスがどんな人物だったのかは知りようがない。

聖書にはあれこれ書かれているけれど、それがありのままのイエス・キリストを記しているとは限りませんからね。

はっきりしているのは、キリスト教徒達が神の名の下にさんざん悪事を働いてきた(特に大航海時代以降) ということだ。

さて、それはさておきヴェイダーに話題を戻しますが、彼らの作品群で誉れ高いものは幾つかある。

特に評価が高いのは2ndアルバムである''De Profundis''
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や4thアルバムの''Litany''かな。
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前者はデス・メタル史上に残る名盤と言われている作品で、ピーター(ヴォーカル兼ギター)の迫力に欠けるスーパーフライ級グロウルがマイナスではあるものの、素材(曲)の良さはやはり名盤と呼ぶに相応しい。

個人的には日本盤のボーナス・トラック扱いである表題曲がオープニングに入っていれば、なお良かったと思う。

ちなみにタイトルの「デ・プロフンディス」はガリシア語で、グーグルの翻訳にかけてみたら「深くから」という結果が出た。

ジャケットを考慮して「深淵から」と訳した方が雰囲気が出て良いと思う。

まぁ、深淵から出てきたわりには弱そうですが(笑)

''Litany''はドック(ドラムス)の演奏がとにかく迫力満点の作品で、よく殺人バスドラと評される。

ユーロビート並のドムドム感が凄まじい彼のバスドラムは本当に強烈で、おそらく一度聴いたら生涯忘れることはないと思う。

ドラムスを前面に押し出している為かミックスは少々いびつで、特にヴォーカルはかなり奥に引っ込んでしまっているのが難点と言えば難点だけれど、そんなことはドックの圧倒的な演奏が全てを帳消しにしている。

ヴェイダーの作品の中ではかなりシンプルな曲で占められ、さらにドラムスが全ての作品であるにも関わらず、「『デ・プロフンディス』の次に好きな作品」とピーターが語ったのは個人的に意外でしたね。

ドックはヴェイダーの歴代ドラマーの中でも特に評価が高い人物で、スタジオ・アルバムはもちろんライヴでも凄まじい演奏を披露してくれる。

そしてヴェイダーのライヴCDである''Live In Japan''
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は初期ベストと言い切れる完璧な選曲はもちろん、彼らの演奏技術の高さをあらためて体感させてくれます。

しかし、やはり最も聴き手に強く印象づけるのはドックの演奏。

映像作品等を見れば分かりますが、ドラマーとしては驚くほど細長い体の彼が涼しい顔して叩きまくる姿は衝撃の一言。

にも関わらず、
「そりゃ、ミスも多少はしたよ。でも、逆にそれがいいと言う人もいる。その方が人間らしくていいってね。だから、些細なミスに関しては余り心配していなかった。俺達は機械じゃなくて人間なんだから」
と語るところがドックの凄いところ。

あまり取りあげられることのない3rdアルバム''Black To The Blind''
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や、ドック時代最後のフルアルバムである''Revelations''
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でも、彼の演奏は常に際立っている。

''Black To The Blind''は正直中古で安かったから買った作品なのだけれど、内容は決して悪くなかった。

特にライヴで頻繁に演奏される''Carnal''は、いつ聴いても心が熱くなる。

呪詛めいたヴァースから、一気に畳み掛けるサビへと変わる瞬間がたまりません。

5thアルバムである''Revelations''はこれまで以上にアンチ・クライスト的要素が目立つ作品で、オープニングの''Epitaph''を始めキリストを「あの堕落野郎」とか「誤った光の支配」と罵る''Wolftribe''等、従来よりもかなり露骨な表現を用いてキリスト教批判をしている。

キリスト教徒が聴いたら、ほぼ確実にキレると思う。

彼らの主張が正しいかどうかは、イエス・キリストが本当はどんな人物だったかによって全てが決まるでしょうね。

仮に聖書通りの人物であれば、彼らが(正確には一貫して作詞作曲を手掛けるピーターが)正しいということになるが、前述したとおりイエスが本当はどんな人物だったのかなんて知りようがない。

でもまぁ、そういった思想面はともかく''Revelations''が音楽的には高い水準に位置する作品であることは間違いないと思う。

従来は正直言ってヘボかったピーターのヴォーカルも大幅にパワー・アップし、軽過ぎることも低すぎることもない、程よい野太さが心地良いグロウルを聴かせてくれます。

しかし、ヴェイダーの音楽的な要の一人であったドックは故障を機にバンドを離脱してしまい、2005年に突然帰らぬ人となってしまった。

ドックが去って以降も良い作品は幾つかありますが、やはりドックがいた頃のヴェイダーはある種の孤高性があったと思います。



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