ill Nino

イル・ニーニョは中南米人とアメリカ人の混成であるラテン・メタル・バンド。

バンド名が気象用語であるエル・ニーニョとよく似ているけれど、最初期はエル・ニーニョ(スペイン語で''神の子''という意味)と名乗っていたらしい。

同ジャンルの先輩であるセパルトゥラやソウルフライなどに比べて作曲能力が高いのが特徴で、クリスティアン・マチャドの声質が自分好みであることもあり、アルバムを長い時間をかけてちょくちょく集めていた。

激しすぎる気性を体現したかのような音像はもちろん、スパニッシュ・ギターやパーカッションといったエキゾチックな要素はまさしくラテンといった感じで、そういった要素も彼らの魅力なのではないかと思う。

そんなイル・ニーニョの1stアルバムである''Revolution / Revolucion''
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は、当時流行ってたアグロ・メタルに似通った部分も多く見受けられるものの全体的に素材(曲)は良い。

重く揺れるリズムにスクラッチ・プレイ、そしてラップ(ただしフロウは呪詛に近く、一般的なラップとは異なる)といった要素はまさしくアグロ・メタルの''それ''そのもので、初期のスリップノットにラテン音楽とメロディアスな要素を加えたものと書けば分かりやすいかな。

まぁ、アートワークやバンド写真はラテンというよりも、マヤ/アステカを思わせますが。

あれこれと詰め込みすぎた結果ごちゃごちゃしているのが難点といえば難点だけれど、とにかく分かりやす音楽なので現実逃避的にやかましい音楽を求める人に向いていると思う。

2ndアルバムである''Confession''
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はアグロ・メタル路線の1stを洗練しさらにメロディアスに仕上げた作品で、クリスティアン曰く「これぞまさしく(ファンの求める)イル・ニーニョ・サウンド」とのこと。

私が彼らの存在を知ったのもこのアルバムがきっかけで、全体的な完成度は1stよりも高いと思う。

アグロ・メタルを感じさせる要素はかなり薄まり、スクラッチ・プレイや呪詛風ラップはほぼ無くなりましたね。

3rdアルバムである''One Nation Underground''
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はアグロ・メタル勢との完全な差別化を図り、「自分達はラテン・メタル・バンドである」とあらためて主張した作品。

1stのようにただひたすら重くて跳ねるようなリズムに合わせて激情を撒き散らしたり、パッチワーク的にメロディアスな歌唱で歌うのではなく、緩急織り交ぜた聴かせる作風に仕上げているのが最大の特徴ですね。

買った当初はメロディーが弱いと感じ、以後しばらくの間彼らを聴かなくなってしまったのだけれど、今聴くと全体的な仕上がりは過去最高であることがよく分かる。

4thアルバムである''Enigma''
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は速い曲を排除したうえでさらにラテン色を強めた作風で、音楽を通じた現実逃避を望むリスナーには総じて不評であるけれど決して悪い作品ではない。

大手であるロードランナー・レコーズを離れたことによる作品の音質劣化も特に感じないため、レコード会社の移籍は彼らにバンド活動の厳しさを痛感させた(らしい)ものの、結果的には悪い方には向かわなかったのではないかな。

5thアルバムである''Dead New World''
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は個人的に''真のイル・ニーニョの1stアルバム''だと思っている作品で、全体的に(私が思い浮かべる)マヤ/アステカを連想させる。

簡単に説明すると、アートワークも含めて「マヤ/アステカ人がメタルをやったらこうなるんだろうな」という作品ですね。

今までの作品は聴いていて「あぁ、ラテンだなぁ」と思うのだけれど、この頃の彼らはまるで先祖返りしたのかと勘ぐってしまうほどマヤ/アステカっぽい。

''やはりイル・ニーニョは中南米系のバンドなのだ''ということが、同作を聴くとよく分かると思う。

6thアルバムである''Epidemia''
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は5thのマヤ/アステカ路線はそのままにデスメタル色を強めた作品で、彼らの全作品の中で最もエクストリームな内容となっている。

個人的には''Dead New World''から''Epidemia''までが彼らのピークだと思う。

出来の良さはもちろん、彼らに流れる血のルーツが色濃く出ているところが特に良いですね。

7thアルバムである''Till Death, La Familia''
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は全体的にメタルコア色が強い作品で、見方によれば再び流行りに乗った形になるのだけれど、元々クリスティアンはグロウルとメロディアスな歌唱を使い分けるシンガーなのであまり違和感は感じない。

3rdアルバムの頃は信仰に対する不信感が垣間見えていたけれど、ブックレットの謝辞(洋楽の場合、謝辞に神あるいはそれに関する言葉があるか無いかで政治的思想がある程度推測できる)にGodと最初に記載されているところを見る限りでは、どうやら彼は信仰を取り戻したようだ。

しかし、そのクリスティアンも現在はイル・ニーニョを脱退。

激情を撒き散らしながらも、「神は俺達の魂を救ってくれる」と歌う''God Save Us''や自分を裏切った女性に対する愛憎を歌う''Te Amo...I Hate You''、そして多分反共産主義ソングである''The Alibi Of Tyrants''など、シンガーとしてはもちろん作詞面で常に中心にいた彼の脱退は非常に残念に思う。

ちなみに、上記した7作品で私が嫌いな作品は無いです。

日本ウケしないバンドであるため個人的にほいほいと人に薦めることは出来ないけれど、もし薦めるとしたら''Confession''と''Epidemia''を選ぶかな。




おしまい(^o^)/



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